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行列のできる法律相談所:監督の指示だったんだから治療費を支払え?! [行列のできる法律相談所]

1. 行列のできる法律相談所:監督の指示だったんだから治療費を支払え?!

監督の指示だったんだから治療費を支払え?!

 男性Aは、少年サッカー部のコーチをボランティアでやっていた。
 が、監督しているチームはイマイチ波に乗れず、なかなか勝てないでいた。
 男性Aは、コーチしている少年の一人に、もっと積極的にプレーするよう指示。
 少年は、その言葉を真に受け、より積極的に動く。
 が、その結果、全治3ヶ月の怪我を負ってしまった。
 翌日。
 少年の母親が男性Aの元にやって来て、「息子はコーチの支持で動き、怪我をした。治療費を支払ってもらう」と宣言。
 男性Aは、治療費を負担しなければならないのか?

 これは、北村弁護士が自身の著作で取り上げた法廷ケースの一つ。
 北村弁護士は、治療費を支払う義務はない、との見解を出している。

判決」では、次の見解が:

北村弁護士の見解:治療費払わない
これは払わなくていいです。例えば野球で『スパイクを向けて人にスライディングして怪我をさせる』という指導をしたならば、これは違法だから、怪我が発生すれば責任を負うという事になるけれども、指示の内容が『強気でいけ』『積極的になれ』等、全て適法な指示なので問題がない

菊池弁護士の見解:治療費払わない
スポーツにも色々ありまして、防げる危険、防げない危険。例えば防げる危険というのは、病気上がりとか怪我上がりとかそういう選手に無理をさせてしまった。スポーツの良さは自分の限界に挑戦する所ですから、それに責任を負わされるという事になったら、スポーツ指導する人がいなくなってしまう

 北村・菊池弁護士の見解は、まさに体育系の立場に立った見解。
 少々の怪我をしたくらいで一々賠償を認めていたら、指導者を希望する者がいなくなってしまう、というのは理解出来る。が、その一方で、住田・本村弁護士が指摘する様に、「スポーツだから多少の怪我は止むを得ない」という甘い考えも最早許されない。
 まして今回のケースでは、全治3ヶ月。かなりの重症。掠り傷でないのは確か。下手すると完治後も後遺症で悩む羽目になるかも知れないのだ。
「自身の限界に挑戦する為、健康の為、精神を鍛える為」のスポーツで、後遺症が生涯残るようであってはスポーツの意味がない。
 まして、怪我した本人が勝手に怪我をしたならともかく、他人の指導に基づいて行動した結果となったら、尚更。(^~^;)

住田弁護士の見解:治療費払う
普通の高校、社会人、プロが怪我を自分の責任として引き受けるのは当然だと思いますが、まだまだ12歳の子供に関して言えば、適切に指導する義務は大人に比べてぐっと高まる訳ですね。これはボランティアであろうがなんであろうが変わらない訳です。何故、3か月もの重大な怪我になったかといったら、プレッシャーをかけ過ぎていた。一般論として『スポーツに怪我は付き物だから責任は無い』と言い切るには凄く危険だと思うので、こういう時の為に、萎縮しない様に保険に入りましょうね、と言いたいのです

 住田弁護士の見解は、母親(モンスターペアレントに近い)の立場に寄り過ぎた感じ。
 スポーツに参加した結果、全治3ヶ月という重症を負ったのだから、何らかの負担を求めたくなるのは理解出来るが……。
 モンスターペアレントの繁殖を助長する見解を出すのはおかしい。
 ボランティアでやる監督(殆ど無償だろう)に、「万が一の為に保険に入っておけ」と迫るのはもっとおかしい。「そこまで要求するならボランティアではなく報酬を寄越せ」という話になってしまう。

本村弁護士の見解:治療費払わない
今は昔と違い格段に被害者の権利意識の高まりがありますから、昔だったら『スポーツ上の怪我だから仕方ない』で済んでいた事が、今では指導者の損害賠償責任を問われるケースが増えている。今回のケースくらいであれば、責任を問わる事はないと思いますけれども、充分注意する必要があると思います

 本村弁護士の見解が、今回は一番妥当。
 本村弁護士も指摘している様に、今回のは偶々監督に責任を問えないケース。
 男性Aが出した指示は、「積極的にやれ」という程度のもので、抽象的で、具体性はない。これがもう少し具体的だったら、やはり何らかの責任は問われるだろう。
 それ以上に重要なのは、男性Aはボランティア、つまり無償で監督をやっている事。監督業で何ら報酬も受けていないのに、いざとなったら賠償責任を負う、というのはおかしいのである。
 男性Aが報酬を少しでも得ていたら、賠償を求められてもおかしくない。ただ、その場合でも、治療費全額を請求出来るかは疑問。サッカーを子供にさせていたのは、親の責任でもあるから。子供が怪我する可能性を完全に排除したかったら、サッカーなんてさせるべきでないし、させるにしてもボランティア(要するに素人)が監督をやっているチームなんかに入れるべきでなかった。

 よく分からないのが、何故今回の母親が息子の怪我の治療費を監督に求めたのか、という事。
 まずサッカークラブの運営者を訴えるべきだろう。
 サッカークラブ自体は有料なのだろうから。(^~^;)





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瓦版

本件において男性Aは少年の骨折の治療費を払う必要は全くありません!見解については北村・菊地弁護士の見解が合理的で、住田弁護士の見解は津村さんも御指摘の通り、モンスターペアレントの繁殖を擁護する見解であり、全く以て論外です。まぁ、自分も高校時代に運動部に所属していたこともあり、怪我も良くしたものです!他の部員の連中であちらこちらを怪我し捲った奴も散々見てきました!一番凄かった例は他の高校のチームのプレーヤーとぶつかった弾みで頭のどこかを切って、顔面を血塗れにしながらも必死にプレーをしている奴がいたことですね。流石にその時はプレーヤーの交代により対処しましたけれども、あれは今でも忘れられない光景ですね。まぁ、それはともあれ、この男性Aは「そこを積極的に行け!」と指示を与えたまでで「ボールを持っているあのライバルのチームのプレーヤーに怪我をさせてやれ!」とまでは言っていないわけです。ということはこの男性Aのコーチングは十分合法的なものだと評価出来る。少々言葉が悪くて恐縮ですけれども、あの骨折も上手くプレーすれば防ぐことが出来た怪我だったかもしれませんし、あの程度の怪我ぐらいで全治3ヶ月にも及ぶ骨折するとはとても考えられません(実際にどれぐらい派手なプレーをすればあんな大怪我をする羽目になるのかまでは自分も一寸想像出来かねますけれどもね!)し、少年が行った病院又はクリニックの医者が藪医者で相当大袈裟な診断をして、少年に無駄な不安を与えているだけかもしれませんし、骨折した少年の母親がそういう演技をしているだけ(可能性は0に極めて近いとは思いますけれどもね。)かもしれないわけです。ですから、VTRを見る限り、今回の怪我は菊地弁護士が指摘された「防げない危険」に当たると思います!北村・菊地弁護士の御指摘通り、「相手に怪我をさせてやれ!」と言う指示を出したり、病み上がりの人に無理をさせてまで練習に参加させたり、試合に出させたりしたとなれば、完全に違法行為であり、慰謝料、場合によっては民事上や刑事上の責任を負わねばならなくなる可能性も大いにありますけれども、男性Aが今回出した指示は「積極的に行け!」という非常に漠然としたものであり、違法な指示だと断じることはとても出来ないと考えます。故にこの場合は男性Aは少年の骨折の治療費を払う必要は全くないです。
by 瓦版 (2011-05-24 20:30) 

つるゆう

はい、治療費払います。
コーチは責任者ですから、積極的に動くように指示するのは別に構わないのですが怪我したらその後暫くはプレーできなくなります。このような健康上の問題から選手を守る義務があり、これを怠っていましたから債務不履行になります?
by つるゆう (2015-05-23 09:21) 

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